返還請求が企業の財務に与える影響

一月二十二日の最高裁判決は、リボルビング方式で消費者ローンを提供しているあらゆる事業者とって、まさに衝撃的な内容となった。
止むことのない過払い金返還請求は行き着くところまで行き、最近はいったん取引を無事終了したと思っていた、いわゆる「完済客」から思いもよらず数百万円単位という高額の返還請求に突如見舞われるケースが後を絶たない。
一時の欲に目がくらんだ過払い債権者による行き過ぎた返還請求を容認する今回の最高裁判断の影響は、各方面に及ぶ。
そもそも過払い金の消滅時効の起算点を巡っては、
1.過払い金が発生するごとか
2.取引終了時点、もしくは取引履歴開示時点かで、地裁・高裁の判断は分かれていた。

今回最高裁が起算点を取引終了時点と判断をしたことで、基本契約のもとでのリボルビンク取引で時効が消滅する事態は一部の例外を除き、ほぼなくなったことになる。
そのため、リボ取引では取引完了後十年を超えない完済客から過払い金返還請求を起こされれば、数百万円単位の返還請求が異常でなくなる事態にもなりかねない。
中堅消費者金融幹部は、「これで過払い金を巡る主要な論点はほぼ出尽くした。今後過払い金額が増えることは避けられない。とくに引当金の積み増しに迫られるところが出てくるだろうが、この状況を耐え抜いたところだけが、次のステップに進める権利を得る」と、あきらめとも付かない言葉を発している。
財務面に与える影響については、行政サイドでも同様の見解を持っている。「今回の判決が効いて、今後倒産する企業が続出する事態にはならないとは思う」と前置きをしつつも、「今後過払い金が増えて、さらに引き当てを積まざるを得ない会社が出てこないとは言えない」と財務への影響を否定はしない。
引当金については、一定の基準に従い、消費者金融、信販・カード各社で過払い金返還請求専用引当金が積まれている。だが、今回の判決を想定した上で、どの程度をカバーしているかは不明だ。
あるキャッシング大手は「過払い金の大幅引き当てを決断した時点で、判決動向も読みつつ、その当時想定される可能性を全て織り込む形で引当額を割り出した」というが、それでも今回の判決で「多少積み増しをせざるを得なくなるのではないか」との見通しを語っている。
大手消費者金融ではすでに数千億円に及ぶ巨額の引当金を積んでいるため、今回の判決による足下の業績への影響は「ほとんどない」(消費者金融大手)という。
一方で、地方の信販会社やキャッシング会社では不安が大きいという指摘があった。
マス顧客を対象にしている大手企業とは異なり、地方に根ざす企業は顧客との親密度が大手とは比較にならないくらい高い。そのため、いったん過払い請求を起されれは、その額は高額に出る傾向が強い。不況色が一層強まる中で、不測の事態に見舞われ、利用者が返済困難になるような事態が発生する度合いは地方ほど高いというのがその理由だ。
クレ・サラ弁護団は会見で、「大手消費者金融は数千席円の引当金をまだ使い切っていない」と述べ、自主的に過払い金返還に応じるよう求めた。この発言を聞いた信販関係者は「彼らは企業経営とは何かを全然理解していない。従業員や給与を減らし、何とか対応している状況を全く分かっていない」と吐き捨てた。


今回の最高裁判決ではとくにクレジットカードでキャッシングを扱っている信販・カード会社にとって、今後会員対応を見直す契機となる可能性が出ている。
今回の最高裁判決では、取引終了をもって時効の起算点としているが、カードの場合、仮にキャッシングの利用が十年以上なくても、ショッビング利用がその間継続していた場合、時効が消滅しない事態が発生するおそれがあるという。
このような状況の利用者が過払い返還請求をしてきた場合、今まては時効の消滅を根拠にして反論してきたが、今回の判決で認められない可能性が高くなった。
クレジットカードの利用は八十年代後半のバブル期以降急成長してきたが、「当時の資金ニーズ
に応えてきたキャッシングが不況下の今日に至り、返還請求となって降って湧いて出てくる」(カード会社)可能性があるというわけだ。
このような事態は一層経営の不安定性を増すことになる。打開策として、返還請求リスクのありそうなカードホルダーに対して、いったんカード利用を取り消し、何らかの形で整理した上で、再度カード発行するという非常手段に訴えることも否定できないという。
このようなやり方は理論的には可能だが、利用者の反発を生むことは避けられない。だが、「そこ
までしないと、返還リスクを事前に遮断することはできないし、そうでないと永遠に過払い金を払い続けなければならない。そうなれば、全社は倒産してしまう」

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